わたしは反対!

社会をかえたアメリカ最高裁判事
ルース・ベイダー・ギンズバーグ

ダイジェスト版
 表 紙 
扉・本文

この本を推薦します

RBGの言葉をあなたの人生の武器に

佐藤倫子  弁護士
千葉県出身。2002年、弁護士登録(埼玉弁護士会)。医学部入試女性差別対策弁護団、結婚の自由をすべての人に訴訟(同性婚訴訟)関西弁護団弁護団員。岩手県花巻市、東京都渋谷区などの法律事務所に勤務したのち、2013年、香川県丸亀市に法律事務所を開所。日弁連男女共同参画推進本部事務局長も務め、日弁連内外の男女共同参画推進に積極的に取り組んでいる。編著書に『司法の現場で働きたい!』(岩波ジュニア新書)がある。
 ゴージャスな法服のレースの襟、凜とした表情に王冠を載せられたイラスト。ラッパーにちなんで付けられた「NOTORIOUS(ノトーリアス・悪名高い)R.B.G」というポップなニックネーム。ルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBG)は、私たちの憧れであり、愛すべきアイドル。最高裁判所の裁判官がアイドルだなんて、ワクワクしませんか?
 中学生のころ、私は担任の教師から生徒会の副会長になるよう勧められました。副会長ではなく会長になりたいと私が言うと、教師は「女子の会長はこれまでいなかった」「女子には無理だ」と言って反対。「そんなのおかしい!」と思った私は「会長以外やりません!」と言って生徒会長に立候補、学校で初めての女子生徒会長になりました。でも、私はずっと「女子だから選挙で落選する?」「女子の会長は信頼されない?」「うまくやれなければ『やっぱり女子だから』と言われてしまう?」と、不安を抱き続けていました。担任からの最初の言葉、「女子には無理」の『呪い』に、私はすっかりかかってしまっていたのです。
 もし、中学生の私がRBGを知っていたらどうだったでしょう。この絵本を読んでいたら? 弁護士として、裁判官として、女性の権利、少数者の権利のため、誰にも媚びず「わたしは反対!」と異議を唱え続けた我らがアイドル「ノトーリアスRBG」のTシャツなんかを持っていたりしたら? そうしたら、私はきっと、教師からの「女子には無理」の呪いなんかにかかることなく、自信をもってこう言ったでしょう。
「それはちがう」
「そう、女の子だって、なんにでもなれるはず」
 時代はもう21世紀。しかし、まだまだ女性差別はなくなりません。日本では、女性の政治家も、医者も、弁護士も、もちろん裁判官だって、まだまだ本当に少ないです。今この瞬間も、昔の私のように、周りの大人から呪いをかけられそうになっている女の子がいるかもしれません。だから、ひとりでも多くの子どもたちに、あなたに、我らがアイドル「ノトーリアスRBG」の人生に触れてほしい。呪いを吹き飛ばす「わたしは反対!」という言葉を、是非、あなたの人生の武器にしてほしいと思います。

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横山眞佐子  児童書専門店「こどもの広場」店主
山口県出身。1979年、下関市に児童書専門店「こどもの広場」を開く。国内外の絵本の原画展や、講演会、小中学校でのブックトークなども企画・運営。子どもの本と人をつなぐ活動を積極的に行っている。2013年、第53回久留島武彦文化賞受賞。著書に『別冊太陽 人生ではじめて出会う絵本100』(平凡社)などがある。
 1947年、戦後生まれの私。少しずつ民主主義や平等、男女同権なんて言葉が使われるようになってきた時代です。中学生になった時、ふと母が言いました。「これからは女の子も社会で仕事ができるようになるから、まさこも自分の好きな事を見つけなさいよ」。その時は何を言われているのかわかりませんでした。母は女学校を出て結婚し、2人の子どもを産み育て、父の世話をし、家事をこなし、いつ学校から帰っても「おかえり」と迎えてくれ、穏やかに笑っている人でした。しかしそんな母の心の中には、やりたい仕事があり、一人の人として自分の人生を生きたかったという思いがあったのかもしれません。でもその時代、そんなことは社会的にほとんど認められていなかったのです。母からの小さなメッセージは45年前、子ども2人を抱えながら児童書の専門店を始めようと思った私の、大きな土台となりました。
 社会を変えようと声を上げたルースも子ども時代、お母さんから「女の子も社会で活躍したらいい」という考えを図書館に連れて行ってもらうことで受け取っていることに気づきました。大きな業績も傍の人から渡された深い思いから芽が出るのですね。あなたは子どもに何を手渡しますか?

学校図書館に置いてほしい本

木下通子(みちねこ)  学校図書館司書
埼玉県の高校の図書館に勤務するベテラン学校司書。社会教育士、ビブリオバトル普及委員、コグトレ研究会会員、埼玉県高校図書館フェスティバル実行委員長。YouTube「みちねこラジオ」主催。社会教育士として子育てや若者支援の活動にも関わっている。著書に『読みたい心に火をつけろ! 学校図書館大活用術』(岩波ジュニア新書)がある。
 男の子には社会で活躍するようになってほしい。女の子は、よい夫を見つけるのが大事」と思われていた1940年代、ルースのお母さんは、女の子も社会で活躍してほしいと考えて、ルースを図書館につれていきました。ルースは本から自分の考えをもった女性が活躍していることを知り、女の子だってなんにでもなれると思うようになります。小学校に入ったルースは、先生たちに疎まれながらも、学校のきまりに「こんなきまりはおかしい」と声をあげていきます。そんなルースは大人になって、法律家となりました。女性の権利を広げるために、子育てをしながら法律家となり、87歳で亡くなるまでアメリカ法曹界で活躍した女性です。
 日本では一見、男女平等が進んでいるようにみえますが、「男性は仕事、女性は家庭」という価値観が根強く残っています。SDGsの目標にもある「ジェンダー平等」では、まずは知ることから始めようと、世界や日本の現状を学びます。いまよりもっと人種差別、男女差別がひどかった時代に、「おかしい!」と声をあげて道を切り開いたルースの伝記は、考えるきっかけになるはずです。ぜひ、学校図書館に置いてほしい一冊です。